目黒キョウジュと銀河鉄道の夜
今年の四月から毎月一回、目黒 実先生を囲んで
宮沢賢治の物語を深めたり、詩や物語を創作する「物語スコーレ」に参加している。
目黒先生との出会いは、一年程前になる。
宮沢賢治について、目黒先生と九州大学の先生が語るというイベントがあり、
それに一緒に参加しないかと、友人のはるなちゃんが誘ってくれたのである。
目黒先生は宮沢賢治を愛している。
目黒先生は沢山の活動をされていて、何をしてきた方なのかといったら、
私はほんの少ししか知らない。
出身は東京で、出版社を立ち上げたり、絵本カーニバルを開催したり、近年、絵本を数冊出版している。
絵本の挿絵は荒井良二さんやイラストレーターの宇野亜喜良さんなどが担当されているという豪華なラインナップだ。
目黒先生はもちろん肩書きだけを聞いても凄いのだが、お会いしてお話を聞くとやはり先生そのものが魅力的だ。
そんな目黒先生のお話を聞くのが毎回楽しくて仕方がない。
この集まりの前に「物語を読んでおくこと」
となっていたが、
いざページを開くと、物語に入り込めず立ち止まってしまう自分がいた。
「あれ?こんなに難しい話だっけ?」
子どもの頃に何かしら目にしてきた銀河鉄道の夜。
お話も映画でみたり、劇でみたり当たり前に知っているつもりだったが、
本を読もうとすると進まないのだ。
知っていると思っていた物語が実は「知らない物語」だったのだ。
宮沢賢治に対しては何故か分からないのだが、
昔から興味はあった。
他の作家にはない惹かれる部分がある。
この日はまず、
銀河鉄道の夜をリレー形式で朗読をする事となった。
参加者は15人ほどだったと思う。
朗読をスタートしたのは午後2時からだった。最終的に終わったのが午後4時を過ぎていた。
思ったより物語は長い。
銀河鉄道の夜の本は、それぞれ自分の持っている本を持ち寄る形になっていた。
なので出版された年代がみんなそれぞれ違う。
朗読のリレーを始めてから2時間程、時間がたち物語もいよいよ終盤に差し掛かる。
朗読の箇所を目で追っていると、突然自分の持っている本の内容と違う部分が朗読され始めた。
みんな「あれ?」といった表情を浮かべたが、そのまま物語は進んでいく。(目黒先生と数人のぞいて)
(そして丁度昔の本を持っている方にこの部分の朗読の順番が来たのが今思えばラッキーだったと思う)
知ってる方も沢山いるとは思うが、
どうやら「銀河鉄道の夜」は彼の死後、
3回も内容を変更されながら出版されているのだそう。
なぜなら、宮沢賢治は「未完こそが完成」という考えがあったようで、何度も何度も修正を加えて形を変えてきたらしい。
その為、原稿の正しい形というのが確かではなく、時代とともに研究・解明され今の形が最終形態とされているようだ。
初期に出版された本に、
「セロのような声のブルカニロ博士」という人物が出てくる。
カンパネルラが消え去ってしまった後に博士が登場し、
セロのような声で主人公ジョバンニに語りかけるのだ。
(今、本屋さんに並んでいる新装版には載っていない)
「あらゆる人のいちばんの幸福を探しなさい」
「お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐ歩いて行かなければいけない。
天の川のなかでたった一つの本当の切符を決しておまへはなくしてはいけない」
詳しくはこちらで読むことができます↓
是非興味がある方は読んでほしい。
私はこんなに内容が違う事を全く知らなかった。
(銀河鉄道 初期)
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/46322_24347.html
その内容が私には響いた。
遠くに感じた物語がより近くに感じた瞬間だった。
時空を超えて、今ここにいる自分の耳元で語りかけられたように聞こえた。
最終的にはこの部分は物語に入れなかったようだが、
宮沢賢治という人の人物像がフッと伝わってくる気がした。
宮沢賢治自身、
これは一体誰に向けたメッセージだったのだろう。
謎は深まるばかり。。。
(色んな説があるそうです)
宮沢賢治は22歳の時に、
自分は残り15年しか生きられないだろうと言っており、
本当に15年後に亡くなったそうだ。
まさしく作品と同じように不思議な人だ。。。
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純粋で不器用な魂は美しい。
私はそう思う。
なので宮沢賢治の作った作品達は
輝きを放ち続けるのだと思う。